「13トリソミー(パトー症候群)ってなんだろう?」
あなたは今、そうお考えではありませんか?
自分の子供が13トリソミーかもしれないと思った時に、実際にどのような病気か理解してないと不安になりますよね。
そんなあなたに朗報です。
この記事では現役の医師が13トリソミーについて詳しく解説しています。
さらにこの記事では13トリソミーの診断方法や治療方法についても解説するので、13トリソミーに対する不安が軽減されます。
今回は13トリソミーの定義、種類、特徴・症状、原因、発症率、診断方法、治療方法、自分の子供が13トリソミーだと分かったらするべきことについて解説します。
13トリソミーについて深く理解して不安を解消することに、この記事がお役に立てば幸いです。
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13トリソミー(パトー症候群)とは
13トリソミー(英語表記:13trisomy)とは、体細胞の13番染色体が通常より1本多く存在し、合計3本になることで発症する先天性疾患です。パトー症候群とも呼びます。
染色体は細胞の中にあってDNAなどの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子情報を扱う染色体の数に異常が起こることで知的障害や身体的異常が引き起こされます。
13トリソミー(パトー症候群)の種類
13トリソミー(パトー症候群)には「標準型」「モザイク型」「転座型」の3つの種類があります。
標準型
13番染色体のうち全てがトリソミーになっている種類の13トリソミーを標準型と呼びます。13トリソミーを発症する人のほとんどが標準型に該当します。
転座型
13番染色体の一部が他の染色体に付着することで、一部だけトリソミーになっている種類の13トリソミーを転座型と呼びます。13トリソミーを発症する人の約20%が転座型に該当します。
モザイク型
13番染色体のうち一部がトリソミーになっている種類の13トリソミーをモザイク型と呼びます。13トリソミーを発症する人のうちモザイク型に該当するのは稀です。
13トリソミー(パトー症候群)の特徴・症状
13トリソミー(パトー症候群)には次の特徴が見られます。
- 顔貌に特徴がある
- 合併症になりやすい
- 寿命が短い
顔貌に特徴がある
13トリソミーの子供の顔貌(がんぼう)には主に次のような特徴があります。
- コロボーマ(虹彩など目の組織の一部が欠けている
- 鼻や鼻孔の未発達
- 口唇烈(こうしんれつ)・口蓋裂(こうがいれつ)
この他にも、次のような身体の異常が見られることが多いです。
- 低体重
- 小頭症
- 頭皮欠損
- 目が小さい
- 単眼
- 耳の変形
- 耳の位置がおかしい
- 皮膚のたるみ
- 多指症
- 手の握り方がおかしい(指の上に外側の指がある)
- かかとの突出
- 爪の発育不良
これらの特徴は21トリソミー(ダウン症)や18トリソミー(エドワーズ症候群)と比べても顕著です。また、重い知的障害も見られます。
合併症になりやすい
13トリソミーの子供は合併症を発症する可能性が非常に高く、合併症の多くは生命を脅かすものです。
中枢神経系合併症
- 全前脳胞症
- けいれん
呼吸器合併症
- 無呼吸発作
- 喉頭・気管軟化症
循環器合併症
- 心室中隔欠損症
- 心房中隔欠損症
- 両大血管右室起始症
消化器合併症
- 胃食道逆流症
- 臍帯ヘルニア
- 総胆管拡張症
- 胆汁うっ滞
尿路生殖器合併症
- 停留精巣
- 水腎症
- 多嚢胞腎
内分泌合併症
- 甲状腺機能低下症
- 遷延性低血糖
血液学的異常
- 好中球の核突出
データ元:小児慢性特定疾病情報センター
このような合併症を発症するため、13トリソミーを持った子供の半数は生後1ヶ月以内に死亡しており、平均寿命が短い原因となっています。
寿命が短い
13トリソミーの子供の平均寿命は約3~4ヶ月です。1年を超えて生存する13トリソミーの子供は僅か10%程度しかいません。21トリソミーの平均寿命が60歳であることと比べても寿命が短いことが分かります。
また、寿命はトリソミーの種類とも関係しており、1年以上生存する13トリソミーの子供の多くはモザイク型であることが分かっています。
データ元:「Longevity and Patau syndrome: what determines survival?」
寿命には個人差があり、13トリソミー患者の最長齢は日本で19歳、欧米では30代の報告もあります。
13トリソミー(パトー症候群)の原因
13トリソミー(パトー症候群)は、13番目の染色体が本来2本しかないところが3本存在することが原因で発症します。
これは卵子と精子の受精の過程で染色体が分離できなかったことが原因の1つです。
本来、親の体細胞にある染色体2本が分離して、卵子や精子には細胞は1本のみが存在しています(減数分裂)。この際に分離がうまく行われないことで染色体が3本存在する細胞が出来てしまうのです。
このように、卵子と精子の受精の過程で、トリソミーが生じる詳しい原因は分かっていませんが、遺伝とは関係なくどの親の子供も発症する可能性がありることが分かっています。
13トリソミー(パトー症候群)の発症率
小児慢性特定疾病情報センターによると、出生児の5,000~12,000人に1人が13トリソミーを発症していると言われており、年間70~170人ほどの13トリソミー(パトー症候群)の子供が生まれていると推測されます。
ただし、流産になったケースや、出生前診断により13トリソミーだと分かった場合に選択的人工妊娠中絶が行われているケースもあるため、妊娠した子供が13トリソミーである確率は上記の10倍程度であると考えられます。
また女性は加齢と共に13トリソミーの子供を産む確率が高くなることもわかっています。
13トリソミー(パトー症候群)の診断方法
13トリソミーを診断するには、「出生前診断」と「出生後の血液検査」の2つの方法があります。
出生前診断
出生前診断では出生前に胎児が13トリソミーかどうかを調べることができ、「非確定検査」と「確定検査」の2種類があります。
非確定検査
非確定検査は精度が高く、母体や胎児にリスクが無いことが特徴です。ただし、精度が80~99%と、100%では無いため、13トリソミーだと診断を確定するにはさらに確定検査を受ける必要があります。
また、非確定検査には3種類ありますが、13トリソミーを判別できるのは新型出生前診断(NIPT)だけであることに注意が必要です。
新型出生前診断 (NIPT) | コンバインド検査 | 母体血清マーカー検査 | |
実施期間 | 10週以降 | 11~13週 | 15~18週 |
検査対象 | ダウン症 18トリソミー 13トリソミー | ダウン症 18トリソミー | ダウン症 18トリソミー 神経管閉鎖不全症 |
精度 | 99% | 83% | 80% |
結果が出る時間 | 1~2週間 | 2週間 | 2週間 |
リスク | なし | なし | なし |
確定検査
確定検査は精度が100%であるが、流産のリスクがあることが特徴です。
確定検査には2種類ありますが、種類によって実施期間や流産の危険性が異なることに注意が必要です。
絨毛検査 | 羊水検査 | |
実施期間 | 11~14週 | 15~16週以降 |
検査対象 | 染色体疾患全般 | 染色体疾患全般 |
精度 | 100% | 100% |
結果が出る時間 | 2~3週間 | 2~3週間 |
リスク | 流産の危険(1/100) | 流産の危険(1/300) |

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出生後の血液検査
出生後になると、13トリソミー(パトー症候群)の乳児には、この病気の特徴的な外見がみられます。出生後の血液検査では予想された診断を確定させるために乳児の血液で検査を行います。
13トリソミー(パトー症候群)の治療方法
13トリソミー(パトー症候群)に対する根本的な治療法はまだ確立されていません。そのため、合併症に対する治療を行うしかありません。
特に先天性の心血管疾患のように命に関わる病気が合併症の場合には、出生後すぐに治療を開始する必要があるため、出産前に医療設備の整った病院に転院することをおすすめします。
1990年代には13トリソミーに対して積極的な治療が行われてなかったのですが、近年では適切な処置を施すため、生後の寿命は伸びている傾向があります。
子供が13トリソミー(パトー症候群)だと分かったらやるべきこと
出産または中絶の選択(出産前)
出生前診断の結果が出てから決断までに残された時間は短く、母体保護法では中絶可能な時期は妊娠22週未満と定められているため、それまでに産むのか中絶するのかの選択をしなければなりません。
出生前診断を受けて異常が認められた場合に中絶を選択する方は多く、2013年~2018年までに検査を受けた受けた75,525人のうち約80%が中絶を選択しているというデータがあります。
データ元:NIPTコンソーシアム
21トリソミー | 18トリソミー | 13トリソミー | |
症例数 | 782(約1%) | 396(約0.5%) | 120(約0.015%) |
中絶数 | 643(約90%) | 208(約60%) | 47(約70%) |
21トリソミー(ダウン症)に比べて18トリソミーや13トリソミーは流産になる可能性が高いため中絶率が低い傾向があります。
医師への相談(出産後)
13トリソミーの子供は、無事に生まれてきたとしても常に容態が急変するリスクがあるため医療設備の整った環境が必要です。そのため医師に相談して適切な病院を選ぶことが大切です。
また、2015年に13トリソミーの子供に対して小児慢性特定疾病の医療費助成などの補助金も用意されているため医師と相談することをおすすめします。
13トリソミー (パトー症候群)まとめ
今回は13トリソミー(パトー症候群)について説明しました。
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