妊娠初期の段階での中絶を検討しているあなた。中絶は時期に関わらず辛いものですが、妊娠初期と妊娠中期では身体的、精神的な負担が大きく異なります。少しでも負担やリスクを軽減するためには、できるだけ早い段階で決断し、手術を受けることが必要です。
この記事では、妊娠初期での中絶について、手術方法やリスクなどを解説します。妊娠中期に入ってからの中絶に比べると負担の軽い初期の中絶のことを知り、中絶が必要な人は少しでも早く病院を受診しましょう。
妊娠初期はいつまで?
妊娠初期とは、一般的に妊娠4週から11週の約2ヶ月のことを言います。
ここで注意したいのは、「妊娠〇週」という数え方は、最後に月経が始まった日を0週0日目として数えるということです。つまり、ここで言う妊娠4週から11週というのは、最終月経があった日を0日としてカウントし、4週目に入った日(28日目)から12週目に入る前日(83日目)までということになります。
それ以前の妊娠0週目から3週までの1ヶ月は妊娠超初期とも呼ばれ、妊娠検査薬でも正確に妊娠したことを示さない上、もともと生理と生理の間の時期にあたるので妊娠に気づかない人がほとんどです。妊娠初期に入る妊娠4週頃になると、本来予定される生理日付近になるため、生理が来ないことで妊娠に気づき始める人が増えます。
この妊娠初期を過ぎた妊娠12週からの期間は妊娠中期と呼ばれる時期です。妊娠初期と妊娠中期では受けることができる中絶手術も異なります。妊娠中期での中絶に比較すると、妊娠初期での中絶の方が身体的な負担やリスクも少ないため、妊娠しても子供を持てない状況であるのなら早めに中絶について検討しなければいけません。
中絶手術の時間と費用
妊娠初期での中絶には、ソウハ(掻把)法および吸引法と呼ばれる方法が用いられます。これに対し妊娠中期での中絶は、人工的に陣痛を起こし死産として胎児を取り出す方法で、妊娠初期の中絶方法とは大きく異なるものです。時期による中絶の違いをご覧ください。
妊娠初期 | 妊娠中期 | |
方法 | 吸引法、ソウハ法 | 人工的に陣痛を引き起こして死産させる |
入院 | 不要 | 数日~1週間の入院が必要 |
所要時間 | 10~15分(術後の回復に2~3時間程度必要) | 手術前の処置を含めると1日以上 |
痛み | ほとんどなし | 出産に似た痛み |
役所への届け出 | 不要 | 死産届の提出が必要 |
埋葬 | 不要 | 必要 |
妊娠初期での中絶は、手術による身体の負担や痛みが少ないばかりか、役所への届け出や埋葬の必要性から見て精神的にも負担が少ないことが分かります。中絶をしなければならないという辛さはいつでも同じかもしれませんが、いずれにしても中絶手術を受けることになるのであればできるだけ早い段階で行うべきです。
この項では、妊娠初期の中絶で行われるソウハ法と吸引法についてさらに詳しく解説します。一概にどちらが良いというものではなく、患者の状態などによって検討されることになりますので、中絶をしなければいけない状況ならまずは早めに病院を受診し、医師に相談するようにしましょう。
また、中絶は自費診療の治療になるため、費用は病院によって異なります。方法によって差があるというよりは、妊娠週数によって金額設定されていることが多く、週数が小さければ小さいほど安く手術を受けられるクリニックもあるため、経済的負担を考えても早めの受診を検討しましょう。
吸引法
メリット | ・子宮に傷がつきにくい ・医師によるスキルの差が出にくい ・特に週数が少ない場合はリスクが低い |
デメリット | ・週数が大きくなればより困難になる ・子宮破裂のリスクがある(特に帝王切開経験のある女性は注意が必要) ・子宮内容物が取り出しきれず残ってしまう可能性がある |
ストローのような形になっている器具を子宮に挿入し、吸引するように子宮内容物を取り出します。妊娠初期の中絶では特に安全性が高いとして、WHO(世界保健機構)でも推奨されている方法です。ソウハ法と比較して、より短時間で手術が完了します。
ソウハ法
メリット | ・帝王切開経験のある女性でも子宮破裂を防ぐことができる ・手術に使う器具の洗浄が容易で、感染症のトラブルがより起こりにくい ・子宮内容物を確実に取り出しやすい |
デメリット | ・医師の器具の扱い次第で子宮に傷がつく可能性がある ・子宮口が硬い場合は手術が困難であったり、子宮に変形が見られる場合には手術に時間がかかったりすることがある |
ソウハ(掻把)法は、ハサミ状の器具を使って子宮内のものをかき出す方法です。日本では戦前から広く行われている方法で、現在でも特に多くの医師が採用しています。子宮の形状などによっては吸引法より手術時間が長引くことがあるのが特徴です。
中絶手術の流れ
妊娠初期での中絶手術における、手術前日から後日行う術後検診までの流れは一般的に下記のようになります。
- 手術前日
手術開始時間の少なくとも6~7時間前から絶飲絶食を行います。病院に指示された時間までに飲食を済ませ、それ以降は飲んだり食べたりをしないようにしてください。 - 手術前
当日病院で受付を済ませてから手術前の時間に、体調のチェックや血圧の計測などの簡単な検査が必要です。出産未経験かつ、初期の中でも妊娠週数が長い場合は、術前にラミセルと呼ばれる器具を子宮口に挿入することがあります。 - 手術
麻酔が十分にかかれば手術を行います。手術そのものの所要時間は15分前後です。 - 手術後
麻酔から覚醒し、帰宅できるまで身体が回復するのに2~3時間を要します。医師によって出血などの状態を確認し、帰宅許可が出れば帰宅可能です。ただし、当日はできるだけ安静にする必要があり、自転車やバイクの運転はできないため、タクシーや家族の送迎などで安全に帰宅しましょう。 - 術後検診
手術を受けてから数日~2週間後に再び診察を受けることになります。この術後検診で問題がないと判断されるまでは性行為や過度な運動をしないようにしてください。
妊娠初期での中絶手術そのものは15分程度で終了しますが、前日から絶飲絶食をしたり、術後検診までは性行為や過度な運動を控えたりといった注意点があり、手術当日以外にも気を付けなければならないことがあります。医師の指示をよく確認し、しっかりと従うようにしましょう。
中絶手術のリスク
前述の通り、妊娠中期に入ってからの中絶に比べ、妊娠初期の中絶は身体的な負担も軽く、リスクが少ないことが特徴です。しかし、全くリスクがないわけではなく、事前に知っておきたい手術後の注意点があります。
- 出血
手術後数日から10日程度は生理のような出血が続くことがあります。出血量や期間はさまざまなので、手術後は常に生理用品を持ち歩くなど出血への備えをしておくようにしましょう。 - 腹痛
手術後1週間頃までは生理痛のような下腹部痛を感じることがあります。これは子宮が元に戻ろうとして収縮することによる痛みなので、心配する必要はありません。また、痛み止めで痛みを緩和することもできるので、辛いときは無理をせず痛み止めを利用してください。 - 吐き気、めまい、頭痛
手術に使われる麻酔によって、術後に吐き気やめまい、頭痛などの症状が現れることがあります。麻酔が効きやすい人に比較的多くみられる症状です。これらの症状は通常30分から1時間程度で消失するため、それまでは病院内でゆっくりと回復を待つようにしましょう。また、帰宅の際は可能な限り家族やパートナーに付き添ってもらうことをおすすめします。 - 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
中絶をしたことによる精神的なショックやトラウマから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することがあります。手術前や手術後などに精神的な苦痛を感じたら、ためらわずに医師に相談してください。医師からのアドバイスはもちろん、病院によっては院内で受けられるカウンセリングの体制が整っていることがあります。 - 感染症
中絶手術を行うと子宮頚管が広がり、感染症への感染リスクが高まります。感染症にかかってしまった場合には抗生剤の投与などの対応が必要になるため、発熱や耐え難いほどの激しい腹痛といった症状が見られれば術後検診を待たずに診察を受けましょう。 - 遺残物
排出すべき組織の一部を取り残してしまう状態のことです。自然に遺残物が体外に排出されてしまえば問題となりませんが、術後検診で体内に遺残物が確認された場合、遺残物を除去するための手術を行う可能性があります。
その他、子宮に穴が開く子宮穿孔や、大量出血といった合併症のリスクも僅かにありますが非常に稀な例です。心配なことは事前に医師に相談し、できるだけ不安を解消してください。
よくある質問
中絶手術を受けるにあたって、ほとんどの人は何らかの不安を感じるでしょう。特に、痛みの有無や将来的な不妊の可能性などが気になる人は多いです。ここでは、中絶手術に関するよくある疑問について解説しますので、手術前に少しでも不安を解消してください。
中絶手術は痛みが伴う?
中絶手術は麻酔をして行うため、術中の痛みはありません。ただし、これは妊娠初期の中絶に限っての話で、妊娠中期での中絶は前処置と呼ばれる痛みを伴う処置が必要なことがあります。痛みの面で見ても、妊娠初期の中絶は妊娠中期での中絶に比べて負担が少ないことが特徴です。
また、中絶手術を受けてから数日は生理痛のような痛みを感じることがあります。これは、中絶後の子宮の収縮に伴う痛みであり、妊娠前の身体の状態に戻るための痛みなので心配する必要はありません。もしも痛みが激しい場合には痛み止めを服用して緩和することができます。
中絶手術後は妊娠できなくなったり妊娠しにくくなる?
中絶手術を受けることによる子宮の損傷や術後の感染症によって不妊に繋がる可能性が全くないわけではありませんが、中絶によって不妊になる人は限りなく少ないです。特に現代は医療技術が進歩し、最新の医療機器によってより安全に中絶手術が行われるようになったため、不妊に繋がるような合併症を引き起こす可能性は非常に低くなりました。
これは複数回目の中絶手術でも同様で、中絶手術の回数によって不妊となる可能性が増大するということもありません。
まとめ
この記事では妊娠初期の中絶について解説しました。妊娠4週~11週にあたる妊娠初期の中絶手術は、妊娠12週以降の妊娠中期での中絶に比べて負担やリスクが少ないことが特徴です。もちろん、中絶はいつ行ったとしても身体的、精神的に負担があります。しかし、中絶をしなければならない状況であることが分かっているのなら、できるだけ早い段階で中絶手術を検討すべきです。
予定外の妊娠をしても子供を産み育てることができないのならば、まずはパートナーや信頼できる家族に相談し、早めに病院を受診してください。